本棚のすき間でつかまえて

本の感想をばかりを書いているブログです。

アメリカ文学

ポール・オースター「鍵のかかった部屋」 翻訳:柴田元幸

今作は1986年に出版されたオースターの初期の作品です。「ガラスの街」「幽霊たち」と今作を合わせたものがニューヨーク三部作と言われていて、登場人物こそ違うけどいずれも人を探す(ある意味、自分を探している)という部分で共通している。数年前に「ガラスの街…

スティーヴ・エリクソン「アムニジアスコープ」 翻訳:柴田元幸

タイトル「アムニジアスコープ」、アムニジアとは記憶喪失とか健忘を意味し、スコープは視野とか範囲とか……、あと他には銃器の照準器という意味にも使われる。どの組み合わせが著者の意図したニュアンスに近いのかは解らないけれども、僕個人としては「過ぎ去っ…

ソール・ベロー「犠牲者」 翻訳:大橋吉之輔

ユダヤ人であるレヴィンサールは、ユダヤ人であるがゆえに世間から偏見を持たれていた。ジュー(ユダヤ人=ジューイッシュの略)と呼ばれ、怒りっぽい、傷つけられると復讐する、金にうるさい、と世間から思われていた。時々「ジューのくせに」と理由もなく…

アリス・ウォーカー「カラーパープル」 翻訳:柳沢由美子

話題になることには、どんな意味があるのか? 黒人女性初のピュリッツァー受賞作品――、そのニュースがアメリカを駆け回った時に著者であるウォーカーは言っている。「黒人であること、女性であることに話題性が生まれる意味は何なのか?」と。というのも今作で…

チャールズ・ブコウスキー「パルプ」 翻訳:柴田元幸

男は「最高!」と言い、女は「最低!」と言う コレクションとして本棚に並べるために買った1冊。以前に図書館で借りて読んだことがあったので、この本は棚へと直行するはずだったのに……、つい1ページ目をパラっと開いたが最後、止まらなくなりました。ということ…

コ―マック・マッカーシー「チャイルド・オブ・ゴッド」 翻訳:黒原敏行

文学的に美しく描かれる殺人 今作は1960年代にアメリカで実際に起きた連続殺人事件をモチーフにした作品です。この手の事実を元にした小説はいろいろあると思いますが、僕が読んだ作品のなかでパッと思いだせるのはトゥルーマン・カポーティの「冷血」。マイケ…

ホーソーン「緋文字」 翻訳:八木敏雄

とあるモチーフがある話 古典を読むことの面白さは、時代がかわっても変わらない人間の普遍的な何かに気がつかされるあたりだと思います。今作、出版されたのが1850年ですが――、著者ホーソーンが描いたのは1650年ころのアメリカについて。1650年頃(17世紀半…

アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」 翻訳:福田恆存

とある老人の尊厳の物語 再読です。僕の心のなかにある「いつか読み直したいリスト」の上位にあった今作――、ヘミングウェイと言えば、まっさきに思い浮かぶ今作。人気作家故にいろいろと揶揄されるヘミングウェイですが――、しかしヘミングウェイという名前は…

トマス・ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」 翻訳:志村正雄

難解と言われるピンチョン。何が解らなかったのか? 2回読みました。それでもしっかりと把握出来た感じはしない。ピンチョンと言えば難解と言われますが、今作はそのなかで一番簡単な作品のようなんです。だけどやっぱり難しい……、たぶん噛みしめながら読ん…

ジョン・スタインベック「月は沈みぬ」 翻訳:龍口直太郎

これはノーベル賞作家(受賞は1962年)であるスタインベックが1942年に出版した作品です。ドイツに対するノルウェー市民の抵抗を描いた内容であり、このことにより1945年にノルウェー国王から勲章を授けられているようです。以下あらすじと感想。 簡単なあらす…