本棚のすき間でつかまえて

本の感想をばかりを書いているブログです。

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

辻原登「冬の旅」

とある日に刑務所から出所した男の行方は? 5年の刑期を終え滋賀刑務所から出所した緒方(主人公)の所持金は17万とわずかだった。大阪の街に戻ってくると辺りを彷徨い、酒を飲んで女を買った。そして博打に手を出してしまうと、わずか3日で金は底をついた。や…

モーパッサン「女の一生」 翻訳:新庄嘉章

箱入り娘がみた夢 自死で生涯を閉じようとしたモーパッサン。今作を読むとモーパッサンが人生というものをどう捉えていたのかが解るような気がする。今作はプロット自体は現在においてはよくあるもので、将来を夢見る娘(箱入り娘)が大人になり現実を知って…

J.M.クッツェー「恥辱」 翻訳:鴻巣友季子

デヴィッドが捨てたもの 南アフリカのケープタウンで大学教授をやっているデヴィッド。彼は二度の離婚を経験し、今ではもう結婚には興味がなくなっている。性欲は娼婦で満たせばいい……、そんな考えに落ち着いていた。しかしある日にデヴィッドは一人の女生徒…

プラトン「パイドン」 翻訳:岩田靖夫

プラトン(紀元前427-紀元前347)著「パイドン」を読みました。今作のジャンルは哲学です。さて、どう感想を書いたものやら……、というのが率直な今の気持ちです。僕は哲学に関して知識はありませんので「何がどうだ」と書けるわけではありません。今作を読み…

アンドレ・ブルトン「ナジャ」 翻訳:巖谷國士 

美を追求する姿勢 ひらめき、勘、直観、予感、第六感、etc…… ある時にふと、自分の行動はそんなものに導かれているのではないか? と感じてしまうことは誰にでもあるのだと思う。著者アンドレ・ブルトンはシュルレアリスムという思想の生みの親のようだが、…

チェーホフ[桜の園] 翻訳:小野理子

生まれながらのサラブレッド・ラネーフスカヤ チェーホフのなかで一番好きな作品です。再読しました。 読み返すのは久しぶりでしたが、以前にはあまり目が向いていなかったことが見えてきた気がしました。我ながら驚きだったのですが……、桜の園の主人である…

マーク・ハッドン「真夜中に犬に起こった奇妙な事件」 翻訳:小尾芙佐

知的好奇心が…… 今作は全世界で1,000万部を超えるベストセラーとなっているらしく、イギリスでウィットブレッド賞、ガーディアン賞、コモンウェルス賞最優秀新人賞などを受賞し、日本では第51回産経児童出版文化賞の大賞を受賞しているようです。 児童文学………

ジョン・スタインベック「月は沈みぬ」 翻訳:龍口直太郎

これはノーベル賞作家(受賞は1962年)であるスタインベックが1942年に出版した作品です。ドイツに対するノルウェー市民の抵抗を描いた内容であり、このことにより1945年にノルウェー国王から勲章を授けられているようです。以下あらすじと感想。 簡単なあらす…

辻仁成「人は思い出にのみ嫉妬する」

これは恋愛小説です。恋愛ドラマに求めるものは人それぞれで違うものだと思いますが、僕の場合――、解らなければ解らないほど恋愛の感情にはふさわしいように思えます。不可解だからこそ、自分が何に突き動かされているのか解らないほどに、そこに潜む感情は…

サマセット・モーム「月と六ペンス」 翻訳:金原瑞人

常識とはなにか? はてなブログにしても何にしても、そこにはそこでの常識のようなものが出来上がるものだと思う。常識、暗黙の了解、空気を読む、エトセトラ――、それらは本当に正しいものかどうか? 一度、疑ってみる必要があるのかもしれない。はてなブロ…